2011年5月1日日曜日

習得順序 ~L1話者、L2/FL学習者で違いはあるのか~



  • L1の習得順序~多分みんな同じ~

 L1の習得順序はみんな一緒といえるだろうか。これに関しては、一致すると考えてよいと思う。幼児は、大体1歳のころに一語で意思を伝えようとする「一語文」を話すようになると言われている。そしてそれが二語、三語と単語の数が増えていくのである。⁽¹⁾ みんながこのような過程を通るのであれば、その獲得の中身もかなり類似していると言えるのではなかろうか。つまり、文法を獲得していくにつれて、使える単語の量が増えていくのだが、その中身はその単語量の増加を支えるために、ある程度決まっている必要があるのではないだろうか。ヤーコブソンは、幼児の音素の獲得順序に普遍性があることを見つけた。しかも、これは子音にも言え、世界の言語の音素の分布ともリンクすることは非常に興味深い(例えばある言語に[p]がなければ[f]も持たず、学習者に関しては[p]を習得せずに[f]が習得されることはない)。⁽²⁾



  • L2/FL学習者はどうだ?~やはり同じ?~

ではL2/FL学習者ではどうだろうか。Klashenは「情報処理の制約」という考え方の中で、情報処理の困難さには3つの次元があると提唱し、その困難さに応じて言語習得が進むとされている。これらからは、L2/FL学習者でも一定の習得順序を経て学習が進むという結論が言えそうである。


  • 転移は?~普遍文法vs問題解決学習~

かし私はそうことは単純でないと思う。L2/FL学習者はすでに母語(L1)を持っているので、認知の仕方はこのL1によって制限される。ここで重要なのは、L2の習得に、普遍文法と問題解決学習のどちらが使用されているのか、ということである。もし普遍文法が関与するのであれば、L2であれ上記のように一定の習得をすると言える。しかし、もし問題解決学習のようにL2の獲得を試みるのであれば、考える過程で(つまり仮説を立てる段階で)母語の文法の影響を受けざるを得ず、習得順序は他のL2学習者と異なってくる。つまり、それぞれの母語から異なった母語の転移を受けると考えられる。そして、第二言語の習得に問題解決学習と普遍文法のどちらが関与しているのかということだが、私はやはり問題解決学習によって習得を試み、結果母語からの影響は避けらず、習得順序は異なるのではないかと考える。少なくとも学校教育で英語を学ぶ日本人は、文法の明示などを日本語で説明を受けるため、母語からの影響を受けた習得の順序を踏んでいるのではないかと思う。例えば、日本人には日本語にはない冠詞の習得が難しいし、前置詞は日本語の格助詞と混同して、「名詞+前置詞」という語順にしてしまうというミスを犯しがちである。
このように、母語の転移を受けるとするならば、言語習得における「情報処理の制約」に、もうひとつ新しい項目を加えなくてはならないことになる。転移は正の転移も合わせて、第二言語習得の順序に、大幅のずれをもたらすのだ。


参考文献


⁽¹⁾ 『やさしくわかる発達心理学』林洋一著、ナツメ社


⁽²⁾ 『言語の脳科学』酒井邦嘉著、中公新書

⁽³⁾ 『英語教員のための応用言語学―ことばはどのように学習されるか―』大喜多喜男著、昭和堂

1 件のコメント:

  1. 参考文献に、かんなり面白そうな本が挙げられていますね!!!!!
    次ぎ会ったとき、感想よろしくデス!!

    返信削除