一言でいえば、「私の英語の勉強を楽にしてほしい!!」と思っている、英語を職業で使うわけでなく、楽しみや趣味程度で身につけたい方には、ホッとできる本。
書いてあることをざっくりとまとめれば、
①シンプルイングリッシュ(著者が提唱し実践している、中3レベルちょい以下くらいの、「実用的な英語」(p.25)であり、「英語の基礎」(p.32))を学び、心理的負担を減らそう
②細かい文法は気にしすぎないようにしよう
③潜在意識にアクセスするため、繰り返し等を意識せよ
④左脳を使って「勉強する」のではなく、右脳を使って「トレーニング」せよ
⑤苦手意識を取り払い、できると思ってしまえ
⑥TOEICや英検は、実用英語とは名ばかりであり、無視せよ
といったところである。
筆者は、どちらかというと心理的なものに造詣が深い、といった印象を受けた。NLPを少しかじった時に感じた空気と同じものを感じた。例えば⑤。ポジティブシンキングは、NLPにおいてかなり重視される。潜在意識などの用語を出すあたりも共通している。もし筆者が、NLPや他の先端応用心理学(?)みたいなものを英語学習に応用しているのなら、それはとても興味深いと思った。
しかしながら、本の内容はお粗末としか言いようがない。まず、理論をしっかり踏まえているとの記述があったが、正直な話学部生である私でさえ、「ん?」と首をかしげてしまうような記述が散見された。まずは、筆者の提唱する「シンプルイングリッシュ」だが、これは一歩間違えれば「化石化」につながってしまうと思う。またこれは枝葉の部分をつつくようで悪いのだが、アメリカ英語とイギリス英語は「平均化さ」れた、という記述も見えたが、私が思うに、たとえ筆者の言うように多少の平均かがあったとしても、些細なものだと思う。これを根拠にして、イギリス英語・アメリカ英語を過小評価し、My Englishや「世界共通語としての英語」、「カタコト英語」を推進することには反感を抱かざるを得ない。
また、特に最近「文法をくよくよ考えるな」と公言してはばからない、その上で学校英語を批判するような文献を見かけるようになったが、彼らには「学校できっちりした文法・基礎を教えているからそんなことが言えるんだ、もし文法知識0なら間違っても同じことは言わないだろう」と言ってやりたい。この本には受験英語への批判はあったが、明らかな形での学校英語教育批判はなかった。しかしながら、文法をくよくよ気にすることをやめるように、と言いながらも、中3までの文法事項はしっかりさせておくように、といったことを言う、少し自家撞着のようなところもある。
社会人には時間がないのだ、と言いながらも、忘れた量を上回るインプット量を、といった趣旨のことを述べているのも、矛盾していると言わざるを得ない。
しかしながら、TOEIC、英検批判等は痛烈・痛快であり、また英語学習にきちっとした目標を設けなければならない、等といった考え方は、非常に大事なことを思い出させられた感じがした。批判的に読まなければならないところも多いが、スクール経営者として成功している筆者だけにあって、一人の優秀な経営者・教育者として確固たるオリジナルの立場を持っているのだ、という気概は感じられた。
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